「授爵記念」碑。

(あしあと その276・東区の9・東苗穂の1)

東苗穂の住宅街の中に、苗穂山農本神社があります。小公園と隣接しているため、境内と呼べるほどの広い敷地はありませんが、堂々たる鳥居の奥に小さな社殿が建てられています。

その鳥居の右わきに自然石でできた石碑が建てられていますが、この碑は札幌農学校の第1期卒業生であり、その後身である北海道帝国大学初代総長となった、佐藤昌介の授爵を記念して建てられた「授爵記念」碑です。玉石を積んだ台座の上に台石が置かれ、さらにその上に角のない丸みを帯びた直方体の石碑が置かれており、碑面に「授爵記念」と大きく刻まれています。台座の周りには、四隅に小さな石柱が配置されて鉄棒の柵で囲まれており、その一部は破壊されたままになっていますが、石柱の一部には「○和友会」と刻まれているものがあります。

碑面の左には、文字が風化して判然としませんが、「正三位勲二等農学博士南鷹次郎」の文字が刻まれています。

かつて苗穂村には、佐藤昌介が開いた佐藤農場があり、米国の先進的な農業手法を取り入れた酪農混合型の農業を行って成功しました。「農本」とは、佐藤が提唱した「農業は人間生活の根本」という言葉から来たものだそうです。昭和3年、佐藤の数々の功績に対して男爵が授けられ、その翌年当時の小作人たちの手により、授爵一周年を祝ってこの記念碑が建てられましたが、昭和58年、佐藤農場ゆかりの人たちの手によって、現在地に再建されました。また、碑面に刻まれた南鷹次郎は、北大総長であった佐藤を補佐し、その後第2代総長を務めた人物です。正三位勲二等は佐藤の叙位受勲であり、この碑が「授爵された正三位勲二等農学博士の碑であることを南が記したもの」であるということを示しているのではないかと思われます。

「歴史のあしあと 札幌の碑」(東部版)

「歴史のあしあと 札幌の碑」 ふとしたことで、札幌とその近郊に残された石碑や記念碑が気になり始めました。 歴史が刻まれてきた碑の数々を、後世に引き継いでいけたらと思います。

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